「残酷すぎる成功法則」読書感想

僕が好きな作家の1人である橘玲さんが監訳したエリック•バーカー氏著「残酷すぎる成功法則」を読了した。まずはこの素晴らしい本に出会えた幸運に感謝したい。2017年のNo.1は「サピエンス全史」かと思っていたが、それに匹敵する面白さだった。

サピエンス全史読書感想① - ゴッホの備忘録

■面白い本の条件

本の紹介の前に、僕が思う名書の見つけ方は3つあると思う。

①自分が好きな作家の本

自分にとって面白いと感じる本を書く作家の本は他の本も大抵マッチする。今回も橘玲さん監訳とのことで即買いだった。

②発売してから時間が経っている本

時間の洗礼は1番わかりやすいフィルタかもしれない。これはマスター•カルジもブログで言及されていた。ただ、1つ問題があって新規性が少ないかもしれない。まだ読書の経験が浅い人は古典を読んでみるといいかもしれない。僕が読書にハマったきっかけは夏目漱石の「こころ」だった。中学、高校と現代文の授業が大嫌いで、教科書に出てくる話は「羅生門」しか読んだことがなかった。「こころ」は高校2年生の現代文の授業で題材にされてたんだけど、一部分が抜粋されているとはいえ、とても長かった。普通だったら絶対読んでなかったんだけど、追試を受ける変わりに感想文を出せばOKだったので泣く泣く読んでみたらとても面白かった。その後大学生になって暇過ぎて本でも読んでみようかなと思って「こころ」を思い出して、1冊を通して読んでみたら登場人物に共感して泣いてしまうくらい面白くて読書にハマってしまった。長くなってしまったが、「羅生門」と「こころ」はkindleなら無料なので未読の方は是非。

③海外の本

翻訳の洗礼もわかりやすいフィルターである。海外で売れていなければわざわざお金をかけて翻訳しようなんて話にならない。

闇雲にタイトルだけで選んで買ってしまって積読を繰り返している人は参考にしてみて欲しい。というわけで、「残酷すぎる成功法則」は2つの要件を満たしていたので高い確率で面白いだろうなとは思っていた。そして面白い本とは1ページ目から引き込まれる。寝食を忘れて、とまではいかないけど電車移動が例え2・3駅でも読みたくなってしまう。そんな本だった。

自己啓発を科学する

残酷すぎる成功法則」について一言で表すと、「自己啓発を科学の域に昇華させた」という表現がしっくりくる。自己啓発と聞くと、成功した著者のインチキくさい自分理論が最初から最後まで展開されるイメージがあったが、査読付き論文などのエビデンスを用いて、科学的根拠のある内容のみを掲載している。「査読付き論文」という言葉は一般の人には馴染みがないかもしれない。wikipededliaには

研究者仲間や同分野の専門家による評価や検証のことである 

査読 - Wikipedia

 とある。ジャーナルや学会にもよるが、学生や教授が論文を頑張って書いて、それをさらに偉い学者さんたちが論理根拠などが十分がちゃんとチェックしましたよという意味だ。つまり、そこらへんのネットに転がってる記事に書いてある内容よりは、信憑性があるということだ。

自己啓発を科学するという文脈での紹介は橘玲さんが書いた前書きの文章が1番わかりやすい。前書きとあとがきはネットで無料で読めるので気になる方はこれだけでも読む価値はあるかもしれない。

残酷すぎるが言おう。9割の人は「成功の法則」をまちがえている(橘 玲) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)

ちなみに、橘玲さんがかなり前に書かれた「残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法」でも自己啓発について触れられている。ここで彼は「自分が変われば世界は変わる」とか「強く願って努力すれば願いは叶う」的な旧来的な自己啓発をバッサリと切り捨てている。この本もとても面白いので気になる方は是非。

残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法、橘玲 : 金融日記

■キュレーション力

もう1つ、この本を表すのであれば「キュレーション力」が挙げられる。凄まじしいまとめ力だ。情報過多の現代にふさわしい名著と言える。

・巷に溢れる数多くの自己啓発書の中から

・科学的なエビデンスがあり、優れているものだけを

ピックアップして紹介している。アダム・グラントの「GIVE & TAKE 与える人こそ成功する時代」は本編もこちらでの紹介も読んだが、「残酷すぎる成功法則」の内容だけでも十分だったかもいれない。

GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代〜読書感想 - ゴッホの備忘録

英語で書かれた自己啓発書は、最初に重要なことが書いてあってその後はそれを補強するストーリーが続くことが多い。重要なエッセンスは実は少ないので、まとめられていることによるメリットは多い。

■訳と監訳

残酷すぎる成功法則」は海外の本であるにも関わらず非常に読みやすかった。まるでネイティブの日本人が書いたみたいに。洋書の場合、翻訳者もかなり大事で、この読みやすさは竹中てる実さんの功績なのだろう。ナンパバイブルの「ザ・ゲーム」なんかは訳が最悪で非常に読みづらい。しかも、日本だとイメージしづらいシーンも多数あり、物語を難解にしている。「残酷すぎる成功法則」が日本人に馴染みがない例などは割愛したと書いてあるのでその効果もあったのかもしれない。「ザ・ゲーム」もまるまる翻訳するだけでなくて、日本のナンパの第一人者に監訳を依頼していればもう少し読みやすかったかもしれないと思うと残念だ。

ちなみに、橘玲玲さんは過去にも海外の本の出版に携わっている。ウォーター・ブロックの「不道徳教育」だ。藤沢さんの言葉を借りると

この本は、売春婦、女性差別主義者、シャブ中、2ちゃんねらー、満員の映画館で「火事だ!」と叫ぶ奴、悪徳警察官、ニセ札づくり、闇金融、慈善団体に寄付しない冷血漢、ホリエモン、ポイ捨て、幼い子どもをはたらかせる資本家、と言った社会で軽蔑されているような人たちや犯罪者までを経済学の原理原則に則り、論理的、合理的に擁護します。

 となっており、非常に面白い。また、監訳ではなく、翻訳となっている。あれだけ素晴らしい文章をかけて、翻訳もできるとは…

不道徳教育、ウォルター・ブロック (著), 橘玲 (翻訳) : 金融日記

自己啓発書を読んだら気をつけること

自己啓発書を読んで何も行動をしない。この世で最も無駄な行為だが、最もやりがちな行為だ。自己啓発書は読んでいて気持ちいい。大成功した億万長者や科学者、ロックスターの成功ストーリーがかかれていて、自分も成功した気になれる。

だが、本を読んだだけじゃ現実は何も変わらない。1つ1つ実行にうつしていかなければいけない。本を読了した僕がまずやるべきことは本に書かれていたことをまとめ、1つずつ実行にうつしていくこと。(いくつか試し始めているがこうかはばつぐんだ!)

内容のまとめについては別の機会に記したい。

残酷すぎる成功法則  9割まちがえる「その常識」を科学する

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