リーダシップ、マネジメント関連の本が読みたいなと思っていたところにAmazonからレコメンドされたので買ってみた。
著者のクラウディオ・フェサーさんのことをも吉良直人さんのことも知らなかった。
過去に紹介した良い本の見つけ方の1つである③海外の本を満たしてはいるが、ジャケ買いに近い。
タイトルに「マッキンゼー」という文字が入っているだけで「ちゃんとしている本だろう」「学びがありそう」と感じてしまうのは僕だけだろうか。ロナルド・チャルディーニが「影響力の武器」で紹介した6つの法則のうちの1つ、「権威」にまんまとひっかかったわけだ。
「影響力の武器」は素晴らしい本だが、長ったらしくて読めなかった。橘玲さんの「亜玖夢博士の経済入門」の「社会的証明」の章を読めば事足りると思う。30分くらいで読めるのでまだの方は是非。
■リーダシップはマネージャーにのみ必須のスキルではない
「リーダーシップ」や「コーチング」といった書籍を本屋で見る度、「この本は管理職のポストにあるおっさんが読むもので、自分には関係ない。」と思っていた。しかし、実はそうでないと本書を読んで感じた。
仕事を進める際は上司→部下という場合もあるが、部下同士で仕事を進める場合もあるだろう。上司→部下で指示する場合はリーダーシップがなくても「やれよ」の一言で部下は従わざるを得ない。しかし、部下同士のコミュニケーションの場合はそうはいかない。指示する権限がないので、相手に何かをやらせたかったら、相手をモチベートし、やる気にさせ、動いてもらわないといけない。それができなければ自分でやるか、上司に指示を出す様にお願いしなければいけない。(これもある意味で上司に対してのリーダーシップが必要だ)
また、本書では会社での部下・上司だけにとどまらず父・子供としてのコミュニケーションについても触れられている。リーダーシップは職場のみならず、家族のおいても必要なのだ。
■著者プロフィール
著者のクラウディオ・フェサーさんはマッキンゼー・アカデミーというリサーチ組織のチェアマン。彼を中心にアカデミーのメンバーにより行われた2年間の集大成が本書となる。その調査方法だが、世界中の企業組織165社、なんと37.5万人もの従業員にアンケート調査を行いまとめ、膨大なファクトを集めどの様なリーダシップが成果を生み出すか科学的な根拠を導き出したとのことだ。ただでさえすごいやつらが、そんな膨大な時間と手間暇かけてまとめたリサーチなんてすごいに決まってるとワクワクしながら、ありがたく読ませてもらった。
ちなみに訳者の吉良直人(きらなおと)さんはICUからハーバードのMBA、帝人などを経てマッキンゼーに入社されたエリート中のエリート。大前研一さんが退社されるまで一緒に働かれ、大前研一さんの「企業参謀」を英訳し、大前さんが米国で発売した「新・資本論」、「新・経済論」を翻訳したとのことで翻訳者も間違えないチョイスとなっている。
吉良という名前を聞いた瞬間に、ひっそりと静かに暮らしたい人を連想してしまった自分が恥ずかしい。
■ストーリー+理論解説で話が進む
内容については一貫して、人に対してインスピレーションを与え動機づけることで、人を動かす方法論について語られる。本書ではこの技能を「インスピレーショナル・リーダシップ」として定義して、鍛えることができると主張する。
本書は架空のストーリー+理論の解説を交互に繰り返すことで読者がインスピレーショナル・リーダシップを学んでいくことができる。架空のストーリーはインフルー社というロンドンに拠点を置き、医療機器を製造するグローバル企業のCEOに就任したばかりのジェームズ・ロビンソンが主人公となる。彼がロンドンからNYに向かう飛行機の中でマーク・ジェンセン博士に会うところから始まる。博士は心理学の権威で、インスピレーションにより影響力を与えるプロセスについて研究していた。
その後、数々の苦難がジェームズに襲いかかるがその度に彼はジェンセン博士に相談し、インスピレーショナル・リーダシップを学びながら乗り越えていく。
■内容は非常にわかりやすい
マッキンゼーのリサーチと聞くと非常に難解な内容で理解できないのではないかという危惧を持つ方もいるかもしれないが、そんなことはない。
理論のパートはすっきりとまとめられていてわかりやすいし(横文字が多くて少し頭に入ってきづらかったが)、何よりストーリーがあるため、理論のパートがどういうことを言っているのか理解しやすかった。
■終わりに
ストーリーに登場するCEOのジェームズは当初、高圧的で命令的な態度で部下に接していた。ジェンセン博士に会い、人にインスピレーションを与えて動かす方法を学んでから柔軟な方法に変えて成功を収めていく。
僕自身の経験からしても、高圧的で傲慢なリーダーに命令されるよりも、温厚でソフトな人柄のリーダーに動機づけをされる方が働いていて気持ちいい。
本書の最後に下記の様な記載がある。
健全な組織を築くには、EQ( Emotional Inteligence Quotient: こころの知能指数)が 高く、心理的感度の高いリーダーが必要であるということだ。健全な組織とは、競合よりも高い業績を上げ、素晴らしい才能を持つ人材を引き付け、従業員のやる気を出させ て力を与え、最終的に株主に対し例外的な報酬を生み出す組織である。
ダニエル・ゴールドマンの「EQ こころの知能指数」について触れられている。発売から20年近く経っても尚名前が出てくるということは時が経っても色褪せない名著なんだろう。これは読んでみたい。
この記事をきっかけに、1人でも傲慢で不遜な上司がいなくなり、この世から少しでも部下達のストレスが軽減すれば幸いである。
マッキンゼーが教える科学的リーダーシップ――リーダーのもっとも重要な道具とは何か
- 作者: クラウディオ・フェサー,吉良直人
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2017/10/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログ (1件) を見る