"恋愛の神様"スタンダールの女性のための恋愛術

「恋は甘い花のようなものだ。しかしその花を摘むには、恐ろしい断崖絶壁の縁まで行かねばならない」ースタンダール

水野敬也さんの新作「運命の恋をかなえるスタンダール」が出ていたので読んでみました。本は面白い作品を見つけたら同じ作者の他作品も大体面白いです。水野敬也さんは「夢をかなえるゾウ」が一番有名かもしれません。その他にはドラマ化された「LOVE理論」などが有名ですね。個人的には「ウケる技術」が一番好きです。(ナンパクラスタの人は必読の一冊です)

本書は夢をかなえるゾウと同じく小説形式でストーリーが進行します。恋愛の神様スタンダールが主人公に色々と恋愛の指南をしていく、笑いあり涙ありで衝撃のラストも待っていてあっという間に読むことができました。

 ■恋愛の神様、スタンダール

主人公は図書館で司書をしている冴えないアラサー女性。過去のトラウマから目立たない様にひっそりと生きてきた。恋愛の経験はなし、処女。今後、永遠に独り身で生きていくことを少しずつ覚悟しており、1人用のマンションの購入を検討している、一言で言うと非モテ女性。

そんな彼女は運命の出会いを果たす。彼女にとって理想の男性が図書館の利用者として現れる。彼との妄想を膨らませる彼女だが、ある日彼に話しかける千載一遇のチャンスを逃してしまう。それに絶望し、落ち込む彼女は恋愛術を指南した古典「恋愛論」を手に取るーすると著者のスタンダールがそこに立っていた。彼は主人公に数々のアドバイスをして運命の恋を叶える指南をしていく。

■恋愛において男は容易な成功を軽蔑する

最初のスタンダールの教えは「男は向こうからくるものをありがたらないものである」とのものだった。確かに、僕達は女の子の方からアプローチしてくる子や簡単に身体を許してしまう女の子に価値を感じにくいかもしれない。

つまり、女の子は好きな男がいても自分からアプローチしてはならず、その男からアプローチされても簡単に応じてはいけないというのだ。なんと難しいのだろう。男の恋愛とはまた別の難しさがある。

逆に言うと、男は簡単に心や身体を許してくれる女の子を大切にすれば周りと差をつけられるのではないだろうか。

■恋をすれば醜さも美しさに変わる

可愛くない自分が運命の彼からアプローチされるわけがないと主人公は嘆く。そんな彼女にスタンダールは「恋に王座を奪われた美」を恋愛論から引用する。

例え顔に傷跡があったしても恋する相手のものならそれが美しいと感じるようになる。だから美しくないことを嘆くな、と。そしてその作用をスタンダールは結晶作用と名付ける。

■結晶作用

結晶作用とはスタンダールが作った言葉で、恋愛において最も重要な概念だと彼は説く。具体的な説明はwikipedia から引用したい。

結晶作用とは、恋愛によってその対象を美化させてしまう心理を、塩坑に投げ入れられた枯れ枝が塩の結晶がつくことによってダイヤモンドで飾られたように見えるという「ザルツブルクの小枝」に例えたもの。

恋愛論 - Wikipedia

そこから先は、運命の男に如何にして結晶作用を起こさせるか?そして、自分は如何に相手の結晶作用から逃れるか?という観点で数々のテクニックが語られる。

■女は自身が男を見る気持ちよりも周りの女が彼を見る態度を重んじる

人間は社会的な動物である。よって、自分の価値観で好きになるよりも周りから認められている人に結晶作用を起こしやすいという。 これはよく見る例えかもしれないが、小学生から社会人までのモテる男の定義を思い出してほしい。

足が速い(小学生)→不良(中学生)→部活のスター(高校生)→お洒落イケメン(大学生)→金持ち(社会人)

 この様に、所属する社会の中で最も価値があるとされるものを持っている男がモテ、周りの女の子からモテることでさらにモテる、モテがモテを呼ぶモテスパイラルが起き、一部の男にモテが集中する。

相手にモテるにはまずは周りから評価を得る必要がある、とスタンダールは説く。これは恋愛工学でも有名な「グッピーのモテスパイラル理論」でも説明されている。

 

優秀な異性の定義は時代によって変わります。だから、遺伝子は他の同性にモテてる異性が優秀な異性として認識するようにプログラムされているという説明は妙な説得感がある。

■自分を変えようとする時、周りの目は気にしない

周囲の評判を上げる方法として、外見を磨くという課題をスタンダールは主人公に課す。急に外見を磨いて周囲から評価されるどころか、いい年してデビューしてると笑われるでのはと心配する主人公にスタンダールは冒頭の言葉を説き続ける。

「何かを手に入れるということは、今はまだ乗りこえていない壁の向こうに行くということだ。そして、手に入れたいものが素晴らしければ素晴らしいほど、壁は高く感じられるだろう。だから、君は選ばねばならない。周囲の人間から笑われるのを恐れて今の現実を一生過ごしていくのか。それともマリウス(運用の彼)に結晶作用を起こさせるために動き始めるのか。」 

 この言葉を受け、このチャンスを逃したらもう次はないと主人公は自分に言い聞かせ動き始める。

何か新しいことにチャレンジする際、周囲の目が気になるかもしれないが、良くも悪くも人って自分のことにしか関心がなくて、他人のことは実はあまり気にならないものだったりする。他人の目を気にするのをやめて、自分がどうありたいか・どうしたいかに焦点を当てると幸せに近づくという話はあながち間違っていないかもしれない。

■魅力とは自信

最初の課題は自分の外見で良いところを100個上げるというものなのだが、自分に自信のない主人公は上げることができない。そんな主人公にスタンダールは100個外見の魅力を伝えてあげる。そして課題の意図を伝える。相手に結晶作用を起こさせる上で、自信が重要だと説く。

「『自信』とは自分自身に対して下す『評価』だ。そして他者は、その人が自分にどれだけ自信を持っているかを敏感に感じ取る。だからこそ、自信のある者は周囲からの評価を高めやすいのだ。

 謙虚であることと自信があることは相反さないと思う。むしろ、自信があるからこそ謙虚であると言ってもいいかもしれない。そして魅力的であることは恋愛に限らず、仕事においても重要だ。

だから、読者の皆さんはこれはら「私なんて…」と言わずに根拠のない自信を持ってほしい。その自信が魅力につながる。自信のつけた方については下記の様に語られている

一旦欠点を棚上げして、長所にだけフォーカスする。そして、その部分を磨き、伸ばし続けることで自信は育くまれるのだ。

 この主人公の場合は、これまで見た目にまったく気を遣っていなかったので伸び代が大きかった。既に美容・コスメについてはある程度力を入れてきている人はキャリアやボディメイクなど、一番伸び代がある領域に力を入れてみるといいかもしれない。

■小悪魔戦略

運命の彼と親しい間柄になった主人公に対し、相手に結晶作用を起こさせるために悪女になれとスタンダールはいう。

悪女が持つ「期待と不安を与えるコミュニケーション」を身に着けろと説く。手に入るかもしれないという期待とともに、手に入らないかもしれないという不安を同時に与え、虜にすることができると言う。

・悪戯

男にひざかっくんなどの悪戯をすることで「この子自分に気があるんじゃないか?」と思わせることができる。

・意中の相手に対しては結晶作用を起こさない様に極力気をつける

自分が結晶作用を起こすと、相手は冷めてしまう。相手に結晶作用を起こすためには自分は結晶作用を起こさないようにすることが大事なようだ。主人公が運命の彼と仲良くなってメールを書くことになった際、スタンダールは彼女に「普通の利用客のハゲのおっさんに書くと思って書きなさい」とアドバイスする。

・意中の相手以外を魅了させ続ける

相手に結晶作用を起こさないようにするためにも、他の相手を魅了させ続ける。そうすることで、男を魅了させる方法を学ぶことができるし、自分に自信がつくという。

・相手が2人いたら、意中でない相手に言い寄ることで意中の相手から愛される

片方の異性に言い寄ることでもう片方の異性の自尊心をくすぐることができる。男性と知り合ったらまずは友達を誘って2-2で食事してみるのがいいかもしれない。

 ■恋をする意味とは?

運命の彼に対してなるべく結晶作用を起こしてはいけないというスタンダールの教えを守る中で彼女は、好きになっていけないのであれば恋をする意味なんてあるのだろうか?と思い悩む。最後に彼女は結晶作用とは、人を好きになることで自分を変えることができるということに気づく。恋をすると女性は美しくなると言うが、その通りかもしれない。 

運命の恋をかなえるスタンダール

運命の恋をかなえるスタンダール

 

 ここまで、書籍の紹介に補足を入れながら綴りました。以降、僕なりに足りないと思ったことを書きたいと思います。 

■運命の恋の見つけ方

書籍では主人公が運命の彼を見つけるところからスタートしますが、実はそれが1番難しい。運命の恋を見つけるにはどうすればいいのでしょうか?

•運命の恋のハードルを下げる

たまに、Twitterで結婚相手の条件として年収1000万以上で、イケメンで、誠実で、身長180cm以上、学歴は早慶以上…なんてのを見かけますが条件がきつすぎる

恐らく1000人に1人もいないのではないか。身も蓋もない話だが、運命の恋の条件を下げた方が出会える確率は高くなる。

•恋愛市場のトリレンマ

恋愛工学に恋愛市場のトリレンマという概念がある。とてもわかりやすい説明なので本家から抜粋します。

経済学では、「固定相場制」「独立した金融政策」「自由な資本移動」は同時に達成できない、という国際通貨・金融制度のトリレンマ(不可能なトライアングル)というのがあります。恋愛工学でこれに対応するのは、女性は、1.イケメン、2.金持ち、3.浮気しない、というみっつの条件を同時に満たす結婚相手を見つけることはできない、という恋愛市場のトリレンマです。 

そんなはずない!と叫びたくなるかもしれないが、3つのうちどれかを捨てたほうがよい。どうしてまイケメンで金持ちが良かったら、ヤリチンであることは受け入れざるを得ない。

•金待ちかイケメンか

ただ、誠実さというのは目に見えない指標なのでこれを重視するのは得策ではない。誠実な非モテだと思ってたらとんでもないヤリチン野郎だった日には目も当てられないから、金と顔のどちらを重視するか決断したほうがいいだろう。