「損する結婚 儲かる離婚」読書感想

急いで結婚する必要はない。
結婚は果物と違って、いくら遅くても季節はずれになることはない。

- トルストイ

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先日発売された、藤沢数希所長の「損する結婚 儲かる離婚」を読了したので感想を記す。

■結婚は人生の墓場か

本書は女性にこそ読んで欲しい本なのである。

 という一文で本書は締めくくられるが、本当にその通りである。逆に男性は読まない方がいいかもしれない。結婚に夢や希望を抱いている男性は、現実を突きつけられ絶望の淵に追い込まれることになるだろう。婚姻制度の仕組みは、世の中に数多くある「知らぬが仏」な事柄のうちの1つだと言える。離婚した際、所得が多い方から少ない方への支払いの計算方法が本書の大部分を占める。読めば読むほど結婚したというだけでこんなにも多額の支払いをしなければいけないのかと陰鬱とした気持ちになるだろう。

 

■離婚時の支払い

離婚が発生した際の支払いについて、抑えるべきポイントは以下である。

結婚債権の価値=離婚成立までの婚姻費用の総額+離婚時の財産分与+慰謝料

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婚姻費用とは通称コンピと呼ばれ、 夫婦のうち高所得者側が片方に対して同等の生活を保証するために支払うべきお金と考えていい。著者はこれを「結婚という金融商品のクーポン」と呼ぶ。計算方法については本書に譲るが、離婚したい高所得者側(主に夫)、このクーポンを少しでも長くもらうために粘る低所得者側(主に妻)という描写が何度となく登場する。想像するだけでもゲンナリする。

財産分与は結婚してから離婚するまで(正式には別居するまで)に二人で蓄えた資産を分けるというものだ。夫がサラリーマン、妻が専業主婦という場合は夫の蓄財の半分を妻が持っていくことになるが、夫がそれだけ稼げたのは家庭を支えた妻の「内助の功」あってものものだと法律で決められている。この記述も繰り返し登場する。男性読者のほとんどが納得できない点だろう。

慰謝料は浮気や暴力に伴う精神苦痛に対する対価で100〜200万円が相場らしい。

 

■それでも前を向いて生きていかなければいけない

婚姻届に判を押すのは借金の連帯保証人になるより怖い

途中でこんな記述が出て来る。とてもキャッチーな文章だが、読了した者には誇張では納得できるはずだ。婚姻届に判を押すことは、将来的に稼ぎの大半を搾り取られるリスクを潜在的に孕んでいる。では子供が欲しい男はどうすればいいのか。残念ながら我が国では子供は結婚した夫婦で育てるのが一般的だ。上記を承知の上で絶望しながら結婚するしかないのだろうか。考えられるソリューションは3つあると考える。

 

1.コンピをもらう側になる

自分より高額所得者と結婚すれば、恩恵を享受する側になれる。問題は、高所得者女性は市場の中で希少で、自分より低所得者と結婚したがらないことだ。

出会いの機会をたくさん増やそう。たくさんの女性にアプローチできるナンパが有効だろう。注意すべきは、バリキャリ女性は夜のエリート男性と同じく夜遅くまで働いているので、平日夜の早い時間には出没しないことだろう。

運良く高所得女性と出会う機会があれば、多少可愛くなくても目を瞑るのが吉だろう。そして来る日に備えて所得以外の魅力を磨くことも大事だろう。筋トレで身体を鍛え、女を口説く練習をしておこう。

 

2.結婚しない

コロンブスの卵的な発想になってしまうが、結婚しなければコンピも発生しない。これは金融日記でも紹介されていたが、結婚しないと公言するなどは避けてダラダラとセフレ関係を続け、先に子供を作ってそのままなし崩し的に産んでもらうのがいいのではないか。ただし、コンピは発生しないものの、養育費の支払い義務は生じるので注意が必要だ。

 

3.婚前契約書を結ぶ

ジョニー・デップアンバー・ハードの離婚劇がケース・スタディで登場するが、米国の富裕層では婚前契約書を結ぶのが常識との記述がある。結婚前に離婚時の取り決めを自分に有利な条件で結べれば、コンピ地獄に苦しむこともなくなるかもしれない。ただし、結婚前に離婚時の取り決めをするのは日本では一般的ではない気がするし、離婚するために結婚する様で相手の承諾を得ることは難しいかもしれない。

 

 ■終わりに

金融市場では「リスクとリターンはトレードオフ」というのは常識であるが、これだけ大きなリスクがある結婚のリターンとは何かだろう。幸せな家庭を築けることか?恐らく、結婚せずとも幸せな家庭を築くことは可能だ。

結婚のリターンは、コンピ(それに相当する妻が享受する利益)をつらつかせて非モテの金持ち男性がモデルなみの美女と結婚できることではないか。港区ではよく見る光景だ。

あなたの横にいる女性は、あなたが「結婚する可能性は0」と言っても明日も変わらず横にいてくれるだろうか?

 

冒頭で引用したトルストイは、34歳のときに18歳のソフィアと結婚し9男3女を儲けた。
82歳の時、夫人との長年の不和から家出を決行するが、鉄道で移動中に悪寒を感じて途中下車、1週間後、駅長官舎で肺炎により死去。葬儀には1万人を超える参列者があった。

損する結婚 儲かる離婚(新潮新書)

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